惣譽酒造株式会社

秋の日に

2017
118
Wed

10月の台風で木の葉はほとんど散ってしまうのではないかと思ったが、まだまだケヤキもプラタナスも、黄色い葉を留めている。陽が当たる銀杏並木は、すっかり色付いて美しい。

もう冬の入り口、というわけでもない。気持ちが先走るのは歳を重ねたせいなのか、もうすっかり秋も深まり、年末がすぐそこに来ていると思ってしまって、焦っている。

この11月、12月は行事も多くて、一息には過ぎていかない時であるのに、そこを一足飛びに飛び越えてしまうような落ち着かない気分は、どうしたことか。

 

この前の或る晩のこと、同業の酒蔵の社長さんたちとお話する機会があった。同じ世代なので、家族の状況もよく似ている。50代半ばから60代前半の私たち。気分も感じ方もよく似ている。少しだけ先輩の方々の話を聞くたび、とても励まされたり、羨ましかったりしている。

 

我々の商売は世襲である。跡継ぎを産み、育てつつ、自分たちの仕事を継承していかなければならない。親子であると同時に、仕事をする同志であり、部下であり、子供が本当の小さい子供であった時代とは違って、家庭はますます皆の仕事場となっていく。

先輩の酒蔵の社長さんたちのご家族も、お父さんはあちらの会合、息子さんはこちらのイベント、お母さんはこちらの・・・と、とても忙しい。この年代、親が50代から60代、子供は20代から30代という、この時期が、親子共々動ける活動的な時代である。

 

同じ方向を向いて、酒を造り、売りに行き、一緒に飲んで、様々な人に出会う。

それはそれで、幸せと言えるのであろう。しかし、忙しいでしょ。あまりにも。

 

もうすぐ、息子が帰ってくる。いよいよ我が家もそういう時代に入っていく。全員集合、がんばって働いて下さーい。いやだいやだ、ますます仕事場になってしまう。それはちょっと、憂鬱。

だんだん慣れてしまって、当たり前になっているけれど、私たち夫婦も、商売の家の中で随分長いこと生活してきたのだ。家庭が仕事場密着。そして、息子までが、仕事仲間になるのか。

 

でも・・・・・最近まで、つい最近まで、私は子供のことばかり考えて、息子や娘と一緒にいた。一緒に遊んでいた。 今ではとても、ありがたいことに思える。 この季節になると、公園でどんぐりを拾って、おままごとをする子供たちを思い出す。 少しだけ冷んやりした空気の中、今と同じように色付いた大きな木々が、私たちを見下ろしていた。

ちいさな子供と過ごす、ゆっくり過ぎていく時間が、とても懐かしい。