惣譽酒造株式会社

酒造夜話

新酒が蔵から出る季節

2019
124
Wed

いよいよ令和元年も師走に入ってきた。今年は10月の消費税アップと、週末ごとの台風が、景気を押し下げた感じをひしひしと感じていたが、12月はどうであろうか。なかなか明るいニュースも少なくて、なにか閉塞感に満ちた世の中であるが、穏やかな気持ちで、小さな自分のまわりだけでも、ほんわかと暮らせたらと願う今日この頃である。

 

10月から始まった今年の酒造りは、すでに佳境を迎えている。栃木県産五百万石で仕込んだ純米大吟醸の新酒生酒が出来上がり、出荷が始まった。瑞々しいスッキリとした生酒。今年から、惣誉の筆字のロゴを前面に出した、浅緑色の新ラベル。黒い瓶が光っていて、ちょっと宇宙に浮かんだ地球のような、近未来的な雰囲気もある。(私だけの感想…)

山田錦の新酒、おなじみの「初しぼり」は、もうすぐ出来上がる。(厳密に言うと、これ書いちゃうと「初しぼり」じゃないじゃん、とわかっちゃう)惣誉の新酒は他の酒蔵に比べると、ゆっくり出てくる。山田錦が晩稲なので、新米の入荷が遅いのだ。しかも、吟醸仕込で、もろみ期間が長い。本当に美味しい酒。惣誉と言えば、「初しぼり」と言うお客様も多い。日本酒をお正月に飲まれる方は多いであろう。この新酒を入り口にして、いつもの定番の酒へと入ってきてもらえれば良いのだけれど。

 

惣誉の事務員さんは、一人は静岡出身、一人はとなりの芳賀町出身の、明るい女性たちである。いつも、キレイな標準語を話している。電話の応対も美しい日本語。しかし、いわゆる「ここいらの言葉」、つまり、八溝なまり(栃木県東部の話し方)を駆使することも出来る。そして、たとえば夕方の、一日の疲れがたまってきたなあ、と感じるとき、この八溝言葉を耳にすると、ほっこりと温かい気持ちになるのである。

 

「きょおは、うっかりしちってえ、あそこのはいたつ、いかさんなかったんだわ」(今日はうっかりして、あそこの配達に行かなかったの)

「だいじだ、あしたでよかっぺよお」(大丈夫、明日でいいでしょう)

「おこられたっくれい、しらねかんな」(怒られても知らないからね)

 

以上の会話は例えばの話なので、実際とは異なりますが、ここいらの人たち、耳に馴染む感じがありませんか。