惣譽酒造株式会社

北風に吹かれて

2019
129
Tue

惣誉の酒蔵の400mほど東側に、大川という川が流れている。名前とは違い、小さな川である。この川に向かって、丘陵地はゆるやかに下がっていき、川沿いの浅い谷を形成している。南北に細長く低い土地が続き、田んぼが広がる。

晩秋から冬の、今の季節には、非常に強い北風が吹きぬける。さえぎるもののない谷底を、束になった北風が、真正面から飛んでくる感じである。

顔を半分隠す大きなマスクと耳を覆う帽子、手袋、風を通さない上着を着て、田んぼ周りの道を散歩する。見渡すかぎり、人影もない。

寒くて何かを考える余裕はなく、せっせと歩く。時々頭をよぎるのは、風が入らないように耳を後ろに倒して歩いていた柴犬の後姿である。

田舎は車の移動が多いため、都会の電車と徒歩の生活より、ずっと歩くことが少ない。歩くことは気持ちの良いものである。

今年の冬は特に雨雪が降らない。大川を流れる水量も少なく、護岸ブロックの下の川底が見えそうだ。

水面近くをセキレイの番いが、せわしなくモノトーンの羽を羽ばたかせて飛んだり、尾をツンツンさせて歩きまわったりしている。

 

惣誉の原料となる井戸水は、この大川の源と同じ、鬼怒川の伏流水である。日光男体山から流れ出る鬼怒川が芳賀大地の下にも地下水を供給していて、豊富な美味しい水を得ることができる。日本酒の造り酒屋のあるところ、美味しい水有りである。

地下水は北北東の方角から南南西方向へと流れているそうだ。

 

北風で耳が凍りつきそうで痛い。顔で風を受けるのが辛くなって、後ろ向きに北へと歩く。大川の小さな橋を渡ったら、川べりを南へ引き返そう。

冬はけっこう無理矢理な散歩。